**ダビデとメフィボシェテの物語**
サウル王の死後、ダビデは全イスラエルの王として即位し、エルサレムに都を定めた。ある日、ダビデは静かな祈りの時を過ごしながら、かつての盟友ヨナタンのことを思い出していた。ヨナタンはサウルの息子であり、ダビデの命の恩人でもあった。彼はサウルとヨナタンが戦死した後、ヨナタンの家族がどうなったのか気にかけていた。
「ヨナタンのために、私にできることはないだろうか……」
ダビデは家臣たちを呼び集め、尋ねた。「サウルの家の者で、まだ生き残っている者はいるのか。もしいるなら、私は神の慈しみをもってその者を顧みたい。」
家臣の一人、ツィバという者が進み出て言った。「はい、王様。ヨナタンの息子で、足の不自由な方がおられます。名前はメフィボシェテといい、ロ・デバルに住んでおります。」
ダビデの心は震えた。ヨナタンの子が生きていたとは! 彼はすぐに使いを送り、メフィボシェテを王宮に招いた。
メフィボシェテは不安でいっぱいだった。祖父サウルはダビデを敵とみなし、命を狙っていた。自分が呼び出されたのは、もしかしたら処刑されるためではないか……。しかし、彼には逃げることもできなかった。足が不自由だったからだ。
王宮に着くと、メフィボシェテはダビデの前にひれ伏した。「王様、この僕が何でしょうか……」
ダビデは優しく微笑み、彼を起こした。「恐れることはない。私はあなたの父ヨナタンのために、あなたに慈しみを示すのだ。あなたの祖父サウルの土地をすべて返し、これからは私の食卓で共に食事をしよう。」
メフィボシェテは驚き、目に涙を浮かべた。「王様……このような僕が、どうして王様の食卓に連なることができましょうか。私はただの犬同然です。」
しかしダビデは首を振った。「ヨナタンの子として、あなたは私にとって大切な者だ。ツィバとその家族、しもべたちをあなたに付けよう。彼らがあなたの土地を耕し、収穫をもたらすだろう。あなたはいつでも、この宮廷で共に過ごすがよい。」
こうしてメフィボシェテは、王の食卓で食事をする者となった。彼はダビデの慈しみに深く感謝し、残りの生涯を神への賛美とともに過ごした。
ダビデのこの行いは、神の契約と慈しみを体現するものだった。彼はヨナタンとの約束を守り、敵の孫であっても、その子孫を愛をもって遇した。これは、神が私たち罪人を憐れみ、御子イエスのゆえに私たちを家族として迎えてくださることを示す、美しい予表でもあった。
「愛は恐れを締め出します。」(ヨハネの手紙一 4:18)――ダビデの行動は、真の愛が報復ではなく、赦しと回復をもたらすことを教えている。