**エレミヤ書11章に基づく物語:契約と背信の叫び**
ユダの地は、灼熱の太陽に焼かれ、乾いた風がオリーブの木々を揺らしていた。預言者エレミヤは、アナトテの小さな村からエルサレムへと歩を進めながら、胸に激しい痛みを感じていた。主なる神が彼に託された言葉は、重く、厳しいものだった。
「エレミヤよ、ユダの民にわたしの言葉を聞け。」
主の声は、燃える炎のように彼の心を貫いた。「彼らの先祖と結んだ契約を思い起こさせよ。わたしは彼らをエジプトの奴隷の家から導き出し、乳と蜜の流れる地を与えた。その時、彼らは『主の声に従います』と誓ったのだ。」
エレミヤはエルサレムの城壁に近づくと、人々が神殿に向かって歩く姿を見た。彼らの顔には安堵の表情が浮かんでいた。「主の神殿があるのだから、災いは来ない」と信じているようだった。しかし、神の言葉は違った。
「彼らはわたしの契約を破り、バアルに従い、異教の神々に香をたいた。彼らの心は石のように硬く、耳を傾けようとしない。」
エレミヤは広場に立ち、声を張り上げた。「ユダの人々よ、主の契約を聞け! あなたがたの不従順が、災いを招くのだ!」
しかし、群衆の中から冷笑が返ってきた。「お前は誰の権威でそんなことを言うのか? 祭司たちも、長老たちも、お前の言葉を認めていない!」
エレミヤの故郷アナトテの人々でさえ、彼を脅した。「預言などやめろ。さもなければ、命はないと思え。」
夜、エレミヤは孤独の中で主に祈った。「主よ、彼らは私を殺そうとしています。私はあなたの言葉を語っただけなのに、なぜこのような報いを受けるのでしょうか?」
すると、主の声が静かに響いた。「エレミヤよ、彼らの悪はあまりにも大きい。わたしは彼らに災いをもたらす。彼らが『平和だ、平和だ』と言っても、剣が彼らを襲うのだ。」
エレミヤは涙を流しながら、神の裁きの厳しさを悟った。しかし、彼の心にはもう一つの確信があった。主は正しい方であり、契約を破った者には必ず報いがあるということだ。
やがて、北から敵の影が迫り、ユダの町々は廃墟と化していった。エレミヤの警告は現実となったが、人々の耳はすでに閉ざされていた。それでも、彼は叫び続けた。
「主に立ち返れ。契約を思い出せ。悔い改めよ――さもなければ、滅びが来る!」
しかし、ユダの民の背信は深く、エレミヤの言葉は風に消えていった。預言者の孤独な戦いは、神の正義と人間の罪の狭間で、静かに続いていくのだった。