聖書

老書記官が綴るソロモンの祈り

巻物の羊皮紙は、長年の手垢で縁が琥珀色に変わり、広げると乾いた草のようなかすかな匂いがした。エルアザルは硯に水を垂らし、固まった墨をゆっくりとすりつぶしながら、窓の外を見つめた。エルサレムの丘は夕暮れの金色に染まり、オリーブの木々の葉が微かに揺れていた。彼は王の書記官として、三十年近くこの部屋に座り、出来事を記してきた。しかし今日、彼の心はある一編の詩篇で満たされていた。ダビデ王が、まだ若きソロモン王のために詠んだと伝えられる、あの祈りの言葉。

彼は筆を執り、まずは今日の日付を記した。しかし、いつもの記録ではなく、思い出を紡ぎ始めた。それは、ソロモンが王位についたばかりの頃のことだ。先王ダビデは老いて寝室の暖を取ることしかできず、新しい王は不安と期待に胸を膨らませた若者だった。エルアザル自身も、その若さに一抹の不安を覚えたことを思い出す。王国は強固とはいえ、周囲には敵対する部族も多く、国内の各部族のまとまりも盤石ではなかった。その若き王の最初の公的な祈りの言葉が、あの詩篇の響きを帯びていた。

「どうか、神よ。あなたの正義を王に授け、あなたの公正を王の子に。」

エルアザルはため息をついた。言葉は美しい。だが、宮殿の冷たい石の床や、廷臣たちのささやき合う声は、それとは程遠い現実を物語っていた。ソロモンは学び、聡明な判断を示し始めた。あの二人の女が一人の嬰児を巡って争った時のことだ。幼子を生き別りにしたと泣き叫ぶ女たち。王は剣を持ってくるよう命じ、「生きている子を二つに割り、半分ずつ与えよ」と言い放った。その瞬間、宮廷は水を打ったように静まり、エルアザルは手に汗を握った。真実の母の悲痛な叫びが石壁に響いた時、王の目には深い悲しみと共に、揺るぎない正義の光が宿っていた。彼はその瞬間、この若き王の中に、単なる知恵を超えた「裁き」の資質を見た気がした。それは詩篇の言葉が、ほんの少し、地に足をつけ始めた瞬間だった。

年月は流れた。王国は拡大し、エジプトからの隊商や、遠くタルシシュからの船が、宝物や香料、異国の珍しい木材を運んでくるようになった。王の名声は国境を越えて広がり、シバの女王のような訪問者さえ現れた。エルアザルは記録する日々に忙殺されながらも、ふと、あの詩篇の一節を口ずさむことがあった。

「彼は日の続くかぎり、月の代々まで、民の貧しい者をさばき、乏しい者の子を救い、しいたげる者を打ち砕くように。」

確かに、王国には富が満ちた。しかし、ソロモンは時折、簡素な衣をまとい、数名の供を連れてだけ、都の下町へと足を運んだ。エルアザルが随行したこともある。王は市場の片隅で日陰を作る布切れの下に座る老女に話しかけ、彼女が不当な値で羊毛を売りつけられていたことを知ると、すぐに商人を呼びつけ、公正な取引を命じた。老女の曇った目に涙が光った時、エルアザルは思った。これが「乏しい者の子を救い」という現実の一つの形なのだと。それは壮大な救済劇ではなく、埃っぽい路地裏での、静かで確かな介入だった。

ある雨の季節、エルアザルは重い腰を上げて、神殿の丘を訪れた。完成したばかりの神殿は、雨に濡れて重厚な輝きを放ち、その周りでは人々が祈りをささげていた。詩篇の言葉が頭に浮かんだ。「彼は雨が草の上に降るように、地を潤す義の雨を降らせる。」 彼は、この物質的な繁栄や知恵の名声以上に、この国を真に潤しているものは何かと考えた。それは、争いが裁かれ、弱者が顧みられるという、目に見えにくい「秩序」ではないか。それは豪雨のように劇的ではなく、むしろ、植物の根元をじんわりと湿らせる地中の水分のように、人々の生活の隅々に浸透するものだ。ソロモンの統治は、そのような潤いを、少なくとも理想として掲げ、時に実現しようとしていた。

しかし、エルアザルは老いた。彼の手は震え、視界もかすみ始めていた。ソロモン王も、もはやあの切れ味鋭い若者ではない。歳月は王の顔に深い皺を刻み、その政策にも、かつての純粋さとは異なる影が落ち始めている。富は増したが、それがすべての人のものかは疑問だ。巨大な建築事業は人々の負担となっているとの訴えも、彼の耳に届いていた。

彼は再び筆を執り、墨を含ませた。窓の外はすっかり暗くなり、最初の星がぽつりと輝いている。彼は、記録官としての冷静な視線と、一人の老人としての思いとを交えながら、言葉を紡いだ。彼が記すのは、単なる歴史でも、賛辞でもない。一つの祈りが、時間という布地にどのように織り込まれ、ある部分は鮮やかな模様となり、ある部分はほつれて見えるかを、書き留めようとしているのだ。

「王の名はとこしえに続き、その名は日のある限り保つように。人々は彼によって祝福され、国々は彼を幸いな者と言う。」

エルアザルは筆を置き、ろうそくの炎を見つめた。炎はゆらめき、壁に揺れる影を作り出している。彼は思う。この祈りは、確かにソロモンの時代に、その影のような形で、その兆しのような形で現れた。雨後の草のように、ほんの一時、青々としたこともあった。しかし、この言葉の重みと完全さは、一人の王、一つの時代には収まりきらないのではないか。まるで、遠くの山々を照らす、まだ登らぬ太陽の予光のように。

彼は最後に、自分のための覚書を、巻物の余白に細い字で記した。
「主なる神、イスラエルの岩よ。あなたの正義と平和が、この地に満ちるその日まで。ひとりの老人の、曇りゆく目は、それを待ち望む。」

彼は巻物をゆっくりと巻き上げ、皮ひもで結んだ。部屋の中には、墨と古い羊皮紙と、そして深い静寂だけが残った。遠くから、夜警の足音が石畳に響き、やがて消えていった。祈りは、また、夜の闇と共に、天へと昇っていく。

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