エリコの城壁の西側、日が傾き始めた頃だった。壁の内部にへばりつくように建てられたラハブの家は、煉瓦の粗さをそのまま露わにしていた。干からびた泥の匂い、夕餉の煙、それに混じってどこからか漂う香料の甘ったるい香り。町全体が、何かを待ち焦がれ、同時に何かを恐れているような、張り詰めた空気に包まれていた。
ラハブは窓辺で亜麻の束を編んでいた。手は動いているが、目は遠くの荒野を貫く道へと向けられている。ここ数日、町に流れる噂は一つだった。ヨルダン川を渡ってきた者たちの話。エジプトを出て、四十年もの間荒れ野をさまよったというあの民。彼らが目前まで迫っているという。町の男たちは口を揃えて、「我々の城壁は堅固だ。何ができるというのか」と強がる。だが、ラハブの耳には別の言葉が響いていた。紅海が分かれた話。アモリ人の二人の王が粉みじんに打ち破られた話。彼らの神は、天と地を造った方だという。町の神々とは、次元が違う。
ふと、通りから慌ただしい足音が聞こえた。見下ろすと、見慣れない二人の男が、早足でこちらに向かっている。服装は商人風だが、目つきが鋭い。土地の者ではない。彼らが家の入り口に近づくやいなや、ラハブは瞬間的に判断した。糸を置き、階段を駆け下りた。
「早く。中へ」
彼女の声は低く、しかし確信に満ちていた。二人の男は一瞬躊躇したが、暗がりに吸い込まれるように家の中へ入った。彼女は扉を閉めると、すぐに階段を指さした。
「屋根の上ですぐに干してある亜麻の束の中に身を隠してください。尋ねる者が来ても、ここにはいないと答えます」
彼らが姿を消すと同時に、門の方から鎧の触れ合う音が聞こえてきた。王の使者たちだ。数人の兵士が家の前に立ち止まり、どんと扉を叩いた。
「ラハブ! 今夜、イスラエルの者どもの斥候がこの町に侵入した。ここに来た者を見たか?」
ラハブは扉を開け、わざとらしくため息をついた。
「確かに男たちが来ましたよ。どこの者かは知りませんでしたが。でも、もういません。あの方たち、日が暮れる直前、門が閉まるころに町を出て行きました。どちらへ去ったかは……急いで追えば、たぶん追いつけるでしょう」
彼女の声には、少し面倒がっているような、しかし役人を恐れる町の女らしい揺らぎがあった。兵士たちは疑わしそうに家の中を覗き込んだが、薄暗がりの中には何も見えない。使者はすぐに方向を指図し、兵士たちは門へと走り去った。彼らが遠ざかる足音を聞きながら、ラハブは背中を壁に預け、深く息を吸った。心臓が高鳴っている。
暗くなりきった頃、彼女は屋根に上がった。亜麻の束がそよぎ、その中から二人の男が現れた。星空の下、彼らの顔は緊張から解き放たれ、感謝の色に変わっていた。
「なぜ我々をかくまい、あのような嘘までついてくれたのか」
ラハブはしばらく黙って、眼下に広がるエリコの町を見下ろした。家々に灯りがともり、普段と変わらぬ夜が訪れようとしている。しかし、彼女にはわかっていた。この平穏は、もう長くは続かない。
「あなた方の神、主がこの地をあなた方に与えられたことを、私は知っています。私たちは皆、それを恐れています。この町の人々の心は、あなた方の到来の前に溶け去ってしまった。紅海の話、荒野での導き、そしてアモリ人の王たちへの勝利……それを聞いたときから、もう誰も戦う気力など残っていないのです」
彼女の声は静かだったが、確信に満ちていた。
「あなた方の神は、上は天、下は地の神です。だから、どうか主にかけて誓ってください。私があなた方に真実を示したように、あなた方も私の父の家に真実を示してください。私の父母、兄弟、姉妹、そしてすべて彼らに属する者たちの命を、救い出してください」
一人の斥候が前屈みになった。
「我々の命が、お前の命に代わる。もし我々のことを誰にも話さなければ、主が我々にこの地を与えられたとき、私たちは慈しみと真実をもってお前を扱おう」
家は城壁の上に建てられていた。ラハブは窓を開け、そこから太い縄を垂らした。
「町を出るには、こちらが良い。ここから降りれば、丘へと続く道に出られます。ただ、追手から逃れるため、三日間は山に身を隠してください。その後、道を戻られれば安全でしょう」
二人の男が順番に縄をつかみ、窓から外の闇へと降りていった。最後の一人が降りる前に、振り返って言った。
「この赤い縄を、今、我々を降ろしたこの窓に結びつけておいてくれ。そして、父母、兄弟、家族を皆、この家の中に集めよ。この家の外に出た者は、たとえ我々の誓いがあろうとも、その血は我々の頭に帰する。だが、この家の中にいる者には、何の害も加えない」
ラハブはうなずいた。
「あなたのお言葉どおりにしましょう」
赤い縄は、窓枠にしっかりと結びつけられた。夕闇の中、それは深い紅色に鈍く光って見えた。二人の斥候は城壁の基部へと消え、やがて闇に溶けていった。ラハブはしばらく窓辺に立ち、冷たい夜風に頬をなでられながら、遠くの山々の輪郭を眺めていた。彼女の胸には、今まで感じたことのない安堵があった。この赤い縄は、単なる逃げ道の目印ではない。彼女と、彼女の全家との、見えない約束の印だ。エリコの町全体が恐怖に震えている今、この小さな家だけが、確かな希望を抱いている。
彼女は最後に縄の結び目を確かめると、静かに窓を閉めた。明日、家族を呼び集めなければならない。父にも、あの頑固な兄にも、このことを話すのだ。彼らが信じてくれるかどうかはわからない。しかし、ラハブは知っていた。天と地を造られた神は、赤い縄の示すこの家を、必ず見逃してくださる。町の喧騒はすでに遠く、部屋の中には亜麻の穏やかな匂いだけが残っていた。すべてが、深い夜の静けさに包まれ始めていた。




