聖書

エリシャの小さな奇跡

預言者エリシャの足跡は、その時代のイスラエルの丘や谷に深く刻まれていた。ある日、風が乾いた土埃を巻き上げる中、一人の女がやつれて彼の前に現れた。彼女の肩は慄き、声は借金取りの脅しに長く晒されたために擦れ切っていた。「私の夫は、あなたの弟子の一人でした。主を畏れる者でしたが、死んでしまい、今、借金だけが残っています。債権者が来て、二人の息子を奴隷に連れて行こうとしているのです。」

エリシャは彼女の頬を伝う涙の跡を見た。日差しが窓を通して、彼女の擦り切れた上衣のほころびを照らしていた。「あなたの家に何があるのか。」彼の声は低く、しかし確かだった。女は顔を上げ、「婢の家には、一つの油の壺があるだけです。それ以外には何も」と言った。その言葉は、希望というよりも、長い諦めの後に零れる吐息のようだった。

「行きなさい。そして、ご近所の方々から、空の器をできるだけ多く借りて来なさい。家に入ったら、戸を閉め、息子たちとともに、その壺の油をすべての器に注ぎなさい。」

女は疑問を抱いた。彼女の頭には、隣人に空の器を乞う自分の姿が、恥ずかしさとともに浮かんだ。しかし、彼女は行った。日が高くなる前に、土器や石の器、あり合わせの容器を集め、息子たちとともに家の奥の部屋に並べた。戸口にはがちがちの木の扉を閉め、小さな窓から差し込む光の中で、あの唯一の油の壺を手に取った。

最初の器に注ぐと、油は滑らかに流れ出た。壺は軽くならない。息子が次の器を差し出した。油は途切れず、琥珀色の輝きを放ちながら器を満たした。三つ目、四つ目。女の手が震えた。部屋の中は、油の甘い匂いで満ちていった。息子たちは無言で器を運び、並べ、注がれた器を隅に移した。やがて、借りたすべての器が油で光り輝いた。

「もう器はありません。」

その時、初めて油の流れは止まった。壺は、彼女が最初に手にした時と同じ重さを保っていた。彼女がエリシャの元に戻って報告すると、預言者は静かに言った。「油を売り、借金を返しなさい。そして、あなたと息子たちは、残りで生き延びなさい。」

彼女はそうした。市場で油は高く売れた。債権者は驚きながら銀を受け取った。女と息子たちの生活は、再び細くとも確かな糸で織られ始めた。

時は流れ、エリシャはある町を通りかかった。シュネムという所である。そこの裕福な女が、彼を食卓に招いた。彼女は夫とともに、丘の上に建つ石造りの家に住んでいた。エリシャが通り過ぎるたびに、必ずと言っていいほど立ち寄り、食事を共にした。ある日、女は夫にこう持ちかけた。「この方は聖なる神の人です。きっと度々ここを通られます。屋上に小さな部屋を設け、寝台と机といすと燭台を備えましょう。お泊まりになられる時に。」

部屋ができると、エリシャはそこに留まるようになった。ある夕暮れ、彼は従者ゲハジを呼び、「この女にしてやれることはないか。彼女は私に多くの気遣いをしてくれた」と言った。ゲハジは答えた。「確かに、彼女には子供がありません。夫も年を取っています。」

エリシャは女を呼び寄せた。彼女は戸口に立った。影が長く伸びる時刻だった。「来年の今頃、あなたはひとり子を抱くであろう。」

女は顔を曇らせた。それは喜びの表情ではなかった。「神の人よ、お願いです。婢を欺かないでください。」彼女の声には、長年の願いが枯れてしまったような響きがあった。しかし、告げられた通り、彼女は身ごもり、翌年、男の子を産んだ。

子供は成長した。ある暑い日、父親のもとで収穫の作業を見ていると、突然、「頭が、頭が痛い」と叫んだ。父親は僕に命じて母親のところに連れて行かせた。母親は膝の上に子供を抱き、昼過ぎまで抱いていたが、子供はついに息を引き取った。

彼女は何も言わず、子供を預言者の部屋の寝台に横たえ、戸を閉めた。そして、夫に言った。「ろばを一頭よこしてください。召使いも一緒に。わたしは神の人のところへ行き、すぐ戻ります。」

「なぜ今日行くのだ。新月の祭りでも安息日でもない。」

「大丈夫です。」

彼女はろばに乗り、ゲハジに先導を命じて、エリシャのいるカルメル山へと急いだ。遠くに預言者の姿が見えると、彼女は走り寄り、その足をつかんだ。ゲハジが彼女を押しのけようとしたが、エリシャは言った。「彼女を放しておきなさい。彼女の魂は苦しんでいる。主はわたしにそれを隠された。」

女は声を絞り出した。「わたしはあの子を乞いましたか。『わたしを欺かないで』と言いませんでしたか。」エリシャはすべてを悟った。ゲハジに杖を持たせ、先に急がせた。「道中で誰にも挨拶するな。子供の口に私の杖を当てるのだ。」しかし、女は動かなかった。「主は生きておられます。あなたの魂が生きておられます。わたしはあなたを離れません。」

彼らは二人で後を追った。ゲハジが到着し、指示通りにしたが、子供の体には声も息づかいも戻らなかった。エリシャが家に着くと、子供は冷たい寝台の上に横たわっていた。彼は戸を閉め、子供と二人きりになった。まず主に祈った。それから、子供の体の上に自らを伏せ、口をその口に、目をその目に、手をその手に重ねた。子供の体は次第に温かくなった。

エリシャは部屋の中を一歩二歩歩き、再び身を伏せた。すると、子供は七度くしゃみをし、目を開いた。彼はゲハジを呼び、「あのシュネムの女を呼べ」と命じた。女が入って来ると、エリシャは言った。「あなたの息子を受け取りなさい。」彼女は入り、その足もとにひれ伏し、そして黙って子供を抱き上げ、去って行った。その腕の中の重みは、かつてないほど確かなものだった。

後のある日、エリシャはギルガルに戻った。地方に飢饉が訪れていた。預言者の弟子たちが野で野菜を集め、大きな鍋で煮物を作っていると、一人が誤って毒のある蔓草を採ってきて、鍋に入れてしまった。「神の人よ、鍋に毒が入っています。」人々が叫ぶと、エリシャは「粉を持って来なさい」と言い、鍋にそれを投げ入れた。すると、鍋の中の物は害のないものに変わった。

また別の時、ある男がバアル・シャリシャから初物の大麦のパン二十個と、新しい穀物一袋を携えて来た。エリシャは「人々に与えて食べさせなさい」と言ったが、給仕の者は言った。「これを百人にどうして分けられましょうか。」エリシャは繰り返した。「主は言われる。『彼らは食べて、なお余すであろう。』」その通りになった。人々は食べ、しかし余りが残った。荒野のような時代にあって、これらのことは、目に見えること以上に、見えない約束の確かさを、静かに、しかし繰り返し人々の心に刻みつける出来事だった。

エリシャは旅を続けた。彼の歩みは重く、時に遅く、砂埃にまみれた。しかし、彼が通る所には、壺から溢れる油のような、死の中からの目覚めのような、ほんの少しの、しかし確かな生の証が、いつもどこかに残されていった。それは壮大な物語ではなく、むしろ、日々の絶望の隙間をぬって滲む、小さな奇跡の連なりであった。

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