聖書

主を求める手

その日、エルサレムの城壁の上に立つと、南から吹く風が、オリーブの木々を通り抜け、重苦しい夏の気配を運んできた。アサはその風に額の汗を感じながら、眼下に広がる都を見下ろしていた。ソロモンの華やかな時代は遠く、国は南北に裂かれ、父アビヤの代にはなお、偶像が丘の上にうずくまるように残っていた。彼は深く息を吸い込み、胸の中で固い決意をかためた。父の死から七日。彼はもう待てなかった。

工事は、彼が命じたように、決して華々しくは始まらなかった。まずは、ユダとベニヤミンの高き所から、異教の祭壇が取り除かれた。作業は黙々と、しかし確実に進んだ。ある日、ギブオンの近くの丘では、バアルに捧げられた石の柱が綱で引き倒される時、地鳴りのような音を立てて崩れ、立ち上る砂埃の中に、長年そこに染み付いていた獣脂の匂いがほんの一瞬、ふわりと漂った。作業に携わったある年老いたレビ人は、その匂いをかぎ、遠い目をして呟いたものだ。「これは、心から出る悔い改めの煙ではない。だが…まずは形からだ。心はその後について来るかもしれん」

アサはそうした細かい報告にも耳を傾けた。彼の改革は、単なる破壊ではなかった。砕かれた偶像の跡地には、しばしば野の花が咲き、あるいは彼の命で、小さな広場が設けられた。人々が集い、語り合う場として。都の中心では、主の祭壇が修復され、香の煙が絶えることなく立ち上るようになった。彼は律法に記されたとおりの祭りを回復させ、人々に遵守を求めた。国には、彼の治世の初めの十年間、珍しい平穏が訪れた。アサはこの時を与えられた備えの時と心得、砦の町々をユダの地に築き、城壁を高くし、塔を設けた。「我々は平和を望む。だが、平和はしばしば武装した者の前にしか訪れぬ」と、将軍たちに語りかける彼の声には、若さゆえの硬さよりも、孤独な覚悟の響きが混じっていた。

そして、十年が過ぎようとする頃、その平穏は金属的な音を立てて破られた。

エチオピアからゼラフが、百万の軍勢を率いてマレシャに迫るとの報せが、喘ぐようにしてエルサレムにもたらされた。百万という数は、恐怖を伝える者の誇張かも知れなかった。しかし、それがたとえ半分、いや三分の一であっても、ユダの全兵力をはるかに凌駕することは確かだった。王宮の広間には、重い空気が流れなかった。それが沈黙というより、音をすべて吸い込む深い淵のようだった。将軍たちの顔は土気色をしている。備えを整えよ、と語ってきた王自身の言葉が、今、鉄の槌のように彼自身の胸に返ってくる。

アサはその場を立ち、奥の庭へと下りていった。庭には、ダビデの時代から伝わるという古い青銅の水盤があった。水は張られておらず、底には乾いた土と、何枚かの落ち葉がたまっていた。彼はその縁に腰を下ろし、両手を膝の上に載せた。祈祷の姿勢ではなかった。ただ、肩の力が、少しずつ消えていくのを感じていた。砦も、塔も、訓練された兵も、全てが、砂の城のように無力に見えた。彼の心の中で、父アビヤの、ある戦い前の姿がふとよみがえった。父は鎧の胸板を叩きながら、将士たちに向かって叫んでいた。「我々の神、主を覚えよ!」その叫びは勇ましかった。しかし、アサは今、その言葉の重さを、全く別の形で理解していた。それは、鎧を叩くような外側の力ではなく、この乾いた水盤のように、まず己の中を空っぽにすることから始まるのだと。

彼はゆっくりと顔を上げ、マレシャの方角を見た。見えるはずはない。しかし、彼の目には、既に黒雲のように地を覆うエチオピアの軍勢と、その前にひしめく自軍の小さな陣が浮かんでいた。

次の日、マレシャの北、ゼパタの谷間で、両軍は相対した。現実は報せ以上だった。エチオピアの軍は、延々と続く人の帯のように見え、その鎧と槍先が朝日を反射して、谷全体をゆがんだ金色に染めていた。対するユダの軍は、周囲の丘の木々のように、わずかに黒く点々と並んでいるに過ぎない。風が吹き、ユダの陣からは、旗がぱたぱたとはためく音しか聞こえなかった。

アサは陣の前に進み出た。彼は特別な鎧も着ておらず、ただ王の証であるマントを肩に掛けているだけだった。彼の声は、当初、思ったほど大きくはならなかった。乾いた風が、言葉の端をいくらか奪っていく。

「ユダの人々、ベニヤミンの人々よ。聞け」

兵士たちの顔が、一斉に彼に向けられる。

「我々の前に立つ者は、数において我々を圧する。我々の力には、もはや頼ることはできない」

彼の言葉は、弱さの告白のようだった。将軍の一人が不安げに動いた。

「しかし」アサの声に、初めて力が宿った。「我々には、弱い者を強くしてくださるお方がおられる。主よ。あなたの御前では、多いも少ないもありません。どうか、この弱き者を助け、あなたの御名のためにお力をお示しください。我々はこの大軍に立ち向かいます。主よ、あなた以外に、われわれを助けるものはないのです」

それは、演説と呼ぶにはあまりに短い祈りだった。複雑な修辞も、熱狂を誘う調子もなかった。ただ、水を求めるように、空っぽの手を差し伸べるような言葉。祈りが終わると、深い静寂が一瞬流れた。そして、誰からともなく、一つの声が上がった。それは祈りを繰り返す声ではなかった。ただ、「主よ」という、切実な呼びかけだった。それが波のように陣中に広がり、やがて、無言のうめきのような、しかし確かな一体感へと変わっていった。

戦いは、記録されるよりも早く、激しい奔流のようであった。ユダの兵士たちは、守るべき陣地も忘れ、ただ前へ前へと突き進んだ。それは勇猛というより、一種の忘我状態に近かった。槍を構え、叫び声を上げて突撃するその姿は、あたかも自分たちの背後に、もう一つの巨大な軍勢が控えていると信じているかのようだった。エチオピアの軍はその勢いに押され、陣形が乱れた。指揮官のゼラフは、この少数の軍の予想外の突進に、かえって罠を疑い、後退を命じたという。後退はやがて総崩れへと変わった。ユダの軍は追撃し、ゲラルに至るまでを蹂躙し、周囲の町々をことごとく略奪の危機から救った。その日、ゼパタの谷に流れた血は、ほとんどがエチオピアの兵士のものであった。

都への帰還は、凱旋というより、深い疲労と静かな畏れに包まれた行進だった。多くの捕虜と戦利品を携えていたが、兵士たちの顔には、勝者の高揚よりも、理解を超えたものを見た者の茫然とした表情が浮かんでいた。アサは先頭には立たず、軍のほぼ中央、沈黙する兵士たちの中にまぎれて進んでいた。彼の目には、あの乾いた水盤の底がちらついていた。あの空っぽさがあったからこそ、主の力が満ちたのだ、と。しかし、その力の大きさがあまりに圧倒的で、彼自身、どこか自分の手に負えないものを触れてしまったような、そんな気持ちにも囚われていた。

エルサレムの門が近づいた時、一人の預言者が、群衆を分けて彼の前に現れた。アザリヤという名の、オデドの子である。彼の目は、勝利の美酒に酔った者たちを見るように、澄み切っていた。

「アサ王よ、ユダとベニヤミン全体よ、聞け」彼の声は鋭く、行進のざわめきを切り裂いた。「あなたがたが主と共にある間、主はあなたがたと共におられる。あなたがたが主を求めるなら、主はご自身を現してくださる。しかし、もし主を捨てるならば、主もあなたがたをお捨てになる。長い間、イスラエルにはまことの神も、教える祭司も、教えもなかった。だが、あなたが苦難の時に主に立ち返り、主に求めた。それゆえ、主はあなたがたを見出された。今こそ、あなたがたの手を弱らせてはならない。あなたがたの働きには報いがあるからだ」

預言者の言葉は、勝利を祝福するものではなかった。それは、今日という日の本当の意味を、深い地層のように掘り下げて示すものだった。アサはその言葉を、額に受け止めるように聞いた。彼は、預言者を見つめながら、あの戦場での、あの空っぽになった瞬間を思い出した。手を弱らせてはならない。それは、これからも、己の力を頼みとせず、あの水盤のように、主に満たされるために空であり続けよ、という勧告なのだと。

その晩、王宮では祝宴が催されたが、アサは早々に席を立ち、城壁へと上っていった。都には、戦勝を祝ういくつかの火の灯りが揺れている。彼は、マレシャの方角を見た。もう、敵の気配はない。ただ、闇と星があるだけだった。

彼はそっと、自分の両手を広げてみた。この手で、今日は剣を握った。しかし、本当に戦ったのは、この手ではなかったかもしれない。彼は手を握り、胸に当てた。そこには、あの祈りの後に訪れた、巨大な静寂が、今も微かに残響しているのを感じた。それは、備えの十年の日々も、ゼパタの激戦の日も、同じく彼を支えた一つの真実だった。彼は深く息を吐き、闇に向かって、新しい決意を、声には出さずに誓った。この手が弱ることはないように。ただ、主を求めるその手であり続けるために。

返信する

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です