その日も、エーゲ海からの風がテサロニケの路地を駆け抜け、乾いた土埃と港の潮の香りを混ぜ合わせていた。クリスポスの家の奥の部屋は、昼過ぎの陽射しが細長く差し込み、浮遊する塵の粒を黄金色に照らしていた。人々は、草筵や木の椅子に腰を下ろし、あるいは壁にもたれかかかり、ひそひそとした、しかし熱を帯びた声で語り合っていた。手紙の話である。パウロからとされる、あの新しい言葉が。
「主の日はもう来ている、とあの者たちは言う」。皮革職人のマケドニオスが、皺の深い額に汗を光らせながら低く言った。「不安に駆られるな、とあの手紙にはあった。だが、今、ここにある現実は何だ? 我々はローマの目に罪人であり、同胞であるユダヤ人からは裏切り者だ。毎日が揺らぎの中にある。主の日が来ているなら、なぜ苦しみは去らない?」
若い染物職人のリュディアが、震える手で亜麻布の端を弄っていた。「アカイアから来た商人が、コリントでさえそんな言葉が広まっていると話していた。『霊を受けたのだから、律法も、労苦も、待望さえも、もう必要はない。主は既に来られた』と」。彼女の声には、願望と恐怖が奇妙に交じり合っていた。その解放の宣言は、あまりに甘美に聞こえたからだ。
部屋の隅で、老いたプリスカが目を閉じていた。彼女は長い沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。「わたしは、パウロがここにいた日々を覚えている。彼は、主が再び来られることを語った。だが、それは、偽りがまず刈り取られる収穫の時のように、順序のあるものだと言った。麦と毒麦は、最後まで一緒に育つのだと」。
その夜、テサロニケは不穏な静けさに包まれた。クリスポスは屋上に出て、星空を見上げた。北の空に、ぼんやりとした光の帯がかかっていた。人々はそれを「神々の道」と呼んだ。彼の胸中には、マケドニオスの焦りとリュディアの動揺、プリスカの静かな確信が入り乱れていた。自分たちが信じたものは、いったい何だったのか。この待ちくたびれた希望は、幻だったのか。もし「主の日」が既に来ているのなら、なぜ自分の内側には、これほどまでに未完成な闇が残っているのか。祈りさえ、虚ろな洞窟の中に叫ぶ声のように、反響だけが返ってくるようだった。
それから数日後、プリスカの息子であるステパノが、埃にまみれて家に駆け込んできた。彼は商隊の護衛をして、アテネまで往復していた。「手紙だ!」彼は息を切らしながら言った。「パウロからの、真の手紙が届いた!」
人々は再び集まった。ステパノが手にしていたのは、よくあるパピルスではなく、分厚い羊皮紙の巻物だった。彼は深呼吸し、震える指で紐を解き、読み始めた。
「兄弟たちよ。わたしたちの主イエス・キリストが再来され、また、わたしたちがみもとに集められることについてお願いする。すぐにさまざまな霊に動かされたり、さまざまな言葉によって心を乱されたりしないように…」
部屋中に、深い、深い息づかいが広がった。それは、窓の外から聞こえる騒音や、遠くの波の音を完全に消し去るような静寂だった。
「だれがどんな方法であっても、だまされないように。まず背教が起こり、不法の者、すなわち滅びの子が現れなければ、主の日は来ないからである。その者は、神と呼ばれるもの、また礼拝されるもの、すべてに反抗し、自分を神以上に高く立て、神殿の中に座を設け、自分こそ神であると言ってのける者です」。
読み手の声が次第に力強くなった。羊皮紙の言葉は、部屋に満ちた不安の霧を、鋭い刃のように切り裂いていった。それは、安易な慰めでも、即座の解決の約束でもなかった。それは、苦難の意味を告げる、厳粛で深遠な予言だった。
「不法の者の到来は、サタンの働きによるもので、あらゆる偽りの力と、しるしと、不思議とをもって現れ、また、滅びる者たちに対して、あらゆる不義の欺きを行うためです。彼らが滅びるのは、自分らの救いとなるべき真理に対する愛を受け入れなかった報いです」。
クリスポスは、その言葉を聞きながら、はっきりと悟った。彼らが今、この瞬間に味わっている混乱そのものが、「不法の者」の先触れなのだ、と。あの甘美な「既に成就した」という嘘、苦しみからの即座の逃避、待ち望むことの放棄—それらすべてが、やがて完全な形で現れる「反キリスト」の、かすかな影なのだ。真の希望は、幻影による麻痺ではなく、たとえ耐え難くとも、現実を見据える覚悟の中にこそある。主の再来は、闇が最も深く、偽りが最もらしく装うその時に、突如として光が破るようにして起こるのだ。
手紙はさらに続き、揺るぎない励ましをもたらした。「ですから、兄弟たち。しっかり立っていなさい。あなたがたが教えられた言伝えを、しっかりと守りなさい」。
ステパノが巻物を閉じた時、既に外は暗くなり始めていた。誰もすぐには立ち上がろうとしなかった。マケドニオスの顔には、もはや焦りではなく、労苦に満ちた確信のようなものが浮かんでいた。リュディアは、手にしていた亜麻布をしっかりと握りしめ、目を輝かせていた。彼女は、自分が求めていた「解放」が、労苦からの逃走ではなく、労苦の中にあっても動かない信仰そのものだと理解した。
プリスカがゆっくりと目を開けた。彼女の目には、静かな涙が光っていた。「麦と毒麦は、最後まで一緒に育つ」。彼女の呟きは、もはや疑問形ではなかった。
クリスポスは屋上に再び上がった。東の空には、一番星がまたたいていた。彼は、この町の喧騒、迫害者の気配、信徒たちの弱さ、そして自分自身の内なる闇を、全て包み込む巨大な約束を感じた。主の日は、まだ来ていない。だが、その「まだ」の中にこそ、揺るがない希望の根拠があった。闇は深まる。偽りは巧妙になる。しかし、それらすべては、やがて来る光の、ほの暗い前兆に過ぎない。彼は深く息を吸い込み、潮風の香りを胸いっぱいに満たした。待つことは、無為ではない。目を覚ましていることは、戦いそのものなのだ。星明りが次第に増していく空の下、彼は初めて、平安という名の確かな土壌の上に立っているのを感じた。




