聖書

預言者ミカの黙示

その日は、空が低く、鉛のように重たく垂れていた。いつもなら、夕暮れ時には西の空を茜色に染める地中海からの風も、この日はまったくなく、ユダの丘陵地帯全体が、巨大な炉の中に投げ込まれたかのような息苦しい熱気に包まれていた。ミカは、家の前の岩の上に座り、目を閉じていた。瞑想しているわけではない。ただ、耐えていた。皮膚にまとわりつく湿った空気を、鼓動のように聞こえてくる不気味な沈黙を。

突然、それは起こった。

雷鳴でも地響きでもない。彼の存在そのものを震わせる、言葉以前の衝撃が、足の裏から頭頂までを貫いた。目を見開くと、周囲の景色はそのままだった。歪んだオリーブの木、乾いた土、遠くに連なるなだらかな丘。しかし、すべてが違って見えた。まるで、世界の背後に隠されていたもう一つの現実──神の御前にひれ伏す現実──が、一瞬にして表に剥き出しになったかのようだった。

「聞け。すべての民よ」

声はなかった。それでも、その「ことば」は、彼の骨髄に直接刻み込まれるように響いた。大地を前に据えて証言せよ。主なる神がご自身の聖なる宮から。見よ、主はその御座を離れ、降りて来られる。その御足は高い所を踏みつけられる。

ミカは身を縮めた。目の前の岩が、焼けた蜜蝋のように溶け始める幻視が走った。いや、幻ではない。彼の霊の目には、まさにその光景が映っていた。主の臨在そのものが、堅固な山々を溶かす火であり、谷を切り裂く水であった。それは、シナイの震えの再来であり、かつての契約の民が味わった恐るべき威光の再現だった。彼は地面に顔を伏せたい衝動に駆られたが、預言者としての霊が彼を押し上げた。見よ、と言われているのだから、見なければならない。

その理由は、ヤコブの背信、イスラエルの罪のため。ヤコブの背信とは何か。それはサマリアではないか。ユダの高き所とは、エルサレムではないか。

サマリア。北の王国イスラエルの首都。金の子牛を拝み、バアルの祭壇を築き、隣国の風習を取り入れ、主の道からますます遠ざかった町。ミカの心に、噂として聞いていたその町の姿が浮かんだ。丘の上にそびえる宮殿と城壁、富裕な者たちの奢侈、そこで行われる淫らな儀式。それらすべてが、今、天の秤にかけられていることが、彼には痛いほどわかった。

「わたしはサマリアを野の石塚とし、ぶどうを植える地とする。わたしはその石を谷に転がし、その土台をあらわにしよう」

主の声、というより宣告が、ミカの内側に響き渡った。それは優しい諭しではなく、避けようのない破滅の宣言であった。石塚。かつての栄華を、誰も顧みない瓦礫の山。誇り高かった城壁の石は一つ残らず引き倒され、谷底へと投げ落とされ、見るも無残な墓標のようになる。そこで育つのは、王侯貴族ではなく、ただのぶどうの蔓。サマリアの偶像はことごとく打ち砕かれ、その偶像に注がれた高価な贈り物は、遊女への賄賂として燃やされる。すべてが、遊女の雇い価から集められたのだから、遊女の雇い価れに帰るのだ。

ミカは、うめき声をあげた。その裁きの光景があまりにも鮮明で、胸が締め付けられた。彼はユダの者だ。南の王国の預言者だ。しかし、北の兄弟へのこの宣告は、彼自身の腸をも抉る痛みを伴った。それは、単なる他国の滅びなどではない。同じ契約の民、同じアブラハム、イサク、ヤコブの子孫への、愛ゆえの激しい憤りだった。

痛みはさらに鋭くなった。主の目は、すでに南に向けられていた。

「それゆえ、わたしは嘆き、悲しみ、裸足で歩き、はだしで歩こう。山犬のように嘆き、駝鳥のように哀悼しよう。その傷は癒えようがない。それはついにユダにまで及んだ。わたしの民の門、エルサレムにまで達したのだ」

今度は、ミカ自身の口から、自らの意思を超えた慟哭の言葉が零れ落ちた。彼は無意識に腰の帯を解き、上着を脱いだ。預言者としての象徴的行為。喪に服する者の姿だ。裸足で灼熱の地面を歩く感覚が、足の裏にひしひしと伝わってきた。山犬の遠吠えのように甲高く、砂漠の駝鳥が鳴くように不気味な、嘆きの声が彼の喉から絞り出される。

なぜなら、裁きは巡回するからだ。サマリアに始まった災いは、国境を越え、ユダの町々を次々に飲み込んでいく。それは、南へ向かって流れ下る死の河のようだった。

ミカは、霊の目でその流れを追った。ガトに告げるな。泣くな。ベテ・アフラでは、塵の中に転げまわれ。シャフィルの住民は、裸で恥をさらして逃げる。ツァアナンは出て来ようとしない。ベテ・エゼルの嘆きは、あなたがたの立つ基さえも取り去る。

彼は、ユダの地図を思い浮かべた。エルサレムから南西に向かう丘陵地帯。ガト──ペリシテの町、かつてダビデが嘆きを秘めて逃れた地。そこへ災いが及ぶことを、民は知るべきではないのか? いや、知らせるな。泣き叫ぶな。もう、手遅れなのだ。隣町ベテ・アフラ(「塵の家」)──その名の通り、彼らは文字通り塵の中に身をひざまずかせるだろう。豊かな果樹園で知られるシャフィル(「美しい町」)の住民は、掠奪者から逃れるため、衣服もまとわぬ姿で恥辱の逃亡を強いられる。ツァアナン(「出て行く」の意)の者たちは、城門から一歩も出ようとしない。恐怖で足がすくんでいる。ベテ・エゼル(「隣りの家」)では、助けとなるべき隣人の支えさえ、もはや失われる。

裁きの波はさらに迫る。マロテの住民は、幸いを待ちわびるが、災いが主からエルサレムの門に下る。ラキシュには疾走する戦車を繋げ。そこの娘シオンは、罪の初めなのだから。イスラエルの背信は、あなたのうちに見られる。

ここで、ミカの心は鋭い痛みを覚えた。ラキシュ。エルサレム防衛の要となる堅固な城塞都市。そこが、なぜ「罪の初め」なのか? 彼は悟った。ラキシュは、北王国イスラエルがアッシリアから持ち込んだ戦車や軍馬の技術、異教の戦術を、真っ先にユダに導入した町ではないか。シオン(エルサレム)への「罪の初め」。それは、武力による頼み、目に見える軍備への依存、主以外のものへの信頼という、根本的な背信の入り口だった。その驕りが、今や逃げるための戦車を繋がせるという皮肉な結果を招く。

それゆえ、モレセテ・ガトに別れの贈り物をせよ。アケジブの家々は、イスラエルの王たちにとって、欺きの水となる。

故郷の名が、彼自身の口から告げられる時、ミカの目に涙が滲んだ。モレセテ・ガト。彼の生まれ故郷、あるいはその近くの村。その地に「別れの贈り物」をせよ。もう二度と戻れない旅立ちのために。そしてアケジブ(「欺きの」の意)──かつては泉や水路があったのだろう、頼みの水場。だが、王たちがそこに救いを求めても、水は涸れている。欺かれるだけだ。かつての頼みはすべて、空虚であることを露わにする。

マレシャの住民は、ついに滅びうせ、イスラエルの栄光は、アドラムにまで来る。あなたの愛する子らのために、あなたの頭の髪を剃り落とせ。禿鷹のように大きく剃れ。彼らはあなたのもとから捕えられて行くから。

マレシャ。ユダとペリシテの境い目の、貿易で栄えた町。その繁栄は、砂上の楼閣であった。アドラムは、エルサレム近郊の、王の避暑地ともされる地。その「栄光」も、捕囚の憂い目の前に色あせていく。ここで、ミカの預言は極めて個人的な悲嘆に変わる。「あなたの愛する子らのために」──彼は、将来の母親たちに向かって叫んでいる。捕らえられ、異国の地へ連れて行かれる我が子たちのために、深い悲しみの印として、頭を剃れ。それは、最も深い喪失と汚辱の表現である。美しい髪は地に散らされ、母たちは嘆きのうちに秃鷹のように頭をさらす。

ミカは、声が枯れるまで叫び続けた。宣告がすべて語り尽くされ、彼の内側にあった神の燃えるような憤りが、少しずつ鎮火していくのを感じた。しかし、それに取って代わったのは、深く重い、底なしの悲しみだった。宣告は終わったが、現実はこれから始まる。

彼は依然として岩の上に座っていた。鉛色の空は少しも変わらず、湿った熱風がようやく動き始め、彼の汗で濡れた顔を不気味になぞった。周囲は相変わらず静かだ。羊の鈴の音さえ聞こえない。人々は家の中にいて、この異常な暑さをやり過ごそうとしている。誰も、彼が今、どれほどの破滅の光景を見、どれほどの哀歌を聞いたかを知らない。

ミカは、ゆっくりと立ち上がった。足元がふらついた。彼は脱いだ上着を拾い、再びまとおうとはしなかった。そのまま、裸足で、乾いた土の上を一歩踏み出した。エルサレムへ向かう長い道のりが、彼の前に横たわっている。彼は語らなければならない。この沈黙を破り、まだ聞こえていない者たちに、この重く厳かな宣告を伝えなければならない。たとえ、それがどれほど無力に思え、どれほど人々に嘲笑われようとも。

一羽の秃鷹が、低い空をゆっくりと輪を描きながら飛んでいた。ミカはその影が自分の上を通り過ぎるのを見上げた。やがて来る嘆きの日を、それは先触れているようにも思えた。彼は深く息を吸い、歩き始めた。足の裏に伝わる小石の痛み、熱された土の温度が、預言者に与えられた苦い使命の現実を、一歩ごとに刻みつけていった。

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